「早く職場に戻らないと、自分の居場所がなくなってしまうのではないか」 「休んでいる間の収入も心配だし、これ以上キャリアに穴を開けたくない」
メンタルヘルスの不調で休職されている方の多くが、このような「焦り」を抱えています。これまで責任感を持って懸命に働いてきたあなただからこそ、立ち止まっている今の状態を「停滞」や「脱落」のように感じてしまうのかもしれません。
しかし、あえてお伝えしたいことがあります。「急いで戻ること」は、時に「再発」という最も避けたい事態を招く最大のリスクになり得るのです。
データが語る、復職後の「5割」が再休職する理由
リクルートワークス研究所の筒井健太郎氏が紹介している研究データには、見過ごせない事実が示されています。うつ病により復職した人を追跡した調査によると、復職後5年以内に47.1%――つまり、約半数に近い人が再び休職を経験しているのです。
なぜ、せっかく勇気を出して戻ったのに、再び立ち止まってしまうのでしょうか。その背景には、「治った(臨床的リカバリー)」と「働ける(社会的リカバリー)」のあいだにある、大きな溝があります。
あなたの「心」のリカバリーは、追いついていますか?
回復には3つの側面が必要だと言われています。
- 臨床的リカバリー:症状が落ち着き、眠れる・食べられるようになること。
- 社会的リカバリー:職場に戻り、以前のような役割をこなせるようになること。
- パーソナル・リカバリー:「これからどう働き、どう生きていくか」という自分なりの意味を見出し、納得感を持つこと。
多くの方が1の体調が少し良くなると、焦りから2の復職を急いでしまいます。しかし、3の「パーソナル・リカバリー」を置き去りにしたままだと、以前と同じストレス環境に戻ったとき、再び自分を見失いやすくなります。
復職はゴールではなく、新しいキャリアのスタート地点です。外側からは「ブランク」に見える休職期間は、実はあなたの価値観を組み替え、「自分らしい働き方」へとOSをアップデートするための貴重な時間なのです。
「お金」や「キャリア」の不安を、仕組みで解消する
「そうは言っても、生活がある」という不安も、痛いほど分かります。だからこそ、国や社会が用意したセーフティネットを賢く使ってください。
- 傷病手当金:給与の約3分の2が最長1年6ヶ月間支給されます。
- 自立支援医療:通院や薬代の負担を軽くできます。
- 障害年金:治療を続けながら生活の土台を守る一助になります。
これらを利用することは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、「二度と倒れないための土台作り」として認められた権利です。経済的な安心を確保することで、ようやく「どう生き直すか」という本来の回復に集中できるようになります。
「以前の自分」に戻るのではなく、新しい自分を「描き直す」ために
「早く戻らなきゃ」という焦りは、これまであなたがどれほど誠実に、責任感を持って仕事に向き合ってきたかという「証」でもあります。ですから、その焦り自体を否定する必要はありません。
ただ、ほんの少しだけ、その重荷を置いてみませんか。
休職という時間は、キャリアの「断絶」ではなく、自分の内側にある物語を新しく描き直すための、大切な「余白」です。外側の世界がどれほど速く動いていても、あなたの人生の主役はあなた自身です。納得感を持って「これからの自分」を選び取っていく「パーソナル・リカバリー」のプロセスには、本来、期限も正解もありません。
私たちビューズは、この「急がば回れ」の時間を何より大切に考えています。 単に職場に戻るための技術を習得する場所ではなく、あなたが自分自身の特性を深く理解し、しなやかな「内的キャリア」を育んでいくための、静かな伴走者でありたいと願っています。
「ゆっくり歩くこと」は、決して後退ではありません。それは、二度と倒れないための、そしてあなたがあなた自身の人生を再び取り戻すための、最も賢く、力強い一歩なのです。
焦らず、恐れず。あなたのペースで、新しい景色を一緒に見つけていきましょう。
(※)引用・参考文献: 筒井 健太郎(2026)「『キャリアをケアする』ということ――メンタルヘルス不調からの復職、その先にあるもの」リクルートワークス研究所
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