
支援者と当事者のあいだで
前回の記事では、職場や社会で「困った人」とされる存在をめぐる議論から、支援する側・される側の視点の違いと、社会全体におけるリテラシーの必要性について考察しました。
今回はその続編として、社会が「受け皿」として機能するために、障害当事者自身がどのように社会と向き合うかという視点から、実践的なヒントをお伝えします。特に、ビューズで実践しているプログラムや支援内容を交えながら、具体的に見ていきます。
当事者に求められる「意識のアップデート」
社会との関わりの中で、障害や心の不調を抱える当事者が求められるのは「支援を受ける姿勢」だけではありません。自分の特性を理解し、相手に伝え、関係を築くための「関わる力」もまた重要です。
ビューズでは、自分自身を見つめる力を育て、他者との違いを理解し受け止めることを重視しています。「自分の考えを発信する」「他者の意見を理解する」といった双方向の対話を意識したプログラムによって、日常生活でも生かせる関係性の力を育てています。
社会とどう関わるか:期待される態度と行動
たとえば、ビューズでは「アサーション」を用いたグループワークを行っています。これは、「自分も相手も大切にする自己表現」を学ぶプログラムです。事実→感情→伝えたいこと、の順番で気持ちを伝えることで、非攻撃的かつ率直な対話が可能になります。
このスキルは、職場や地域での小さな誤解や摩擦を防ぐことに直結します。相手を責めるでもなく、自分を我慢させるでもない「中庸の伝え方」ができるようになることで、関係性は格段に良くなります。書籍『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』でも、割と詳細にアサーションに関する説明がなされています。ビューズでも以下の関連ページに事例を踏まえてアサーション的なアプローチをわかりやすく説明している動画を準備していますので、ご参考にしてみてください。
ビューズの支援としての実践例
さらに、「自分の取扱説明書」を作成するプログラムでは、自身の特性や不調時の対応方法などを具体的に整理し、他者に伝える準備をします。これは職場での配慮事項を伝える際や、支援者との意思疎通において非常に役立つツールです。
また、「ダイアログ(対話)」や「ミッションインポッシブル」といった独自のプログラムでは、日常的なコミュニケーションの中で発信力やヒアリング力、交渉力を鍛える実践の場を提供しています。
二元論ではなく、スキル不足の相互性
「困った人」とそれに「対応する人」という二項対立の見方では、解決にはつながりません。実際には、双方にとってコミュニケーションスキルの不足がすれ違いの原因であることが多く、そこに「誰かが悪い」といった単純な構図は存在しません。
支援を受ける側、支える側——そのどちらもが「当事者」であるという視点に立ち、互いにリテラシーを高めていくことが、共に生きる社会を築く一歩になるのではないでしょうか。
私たちビューズは、こうした対話の橋渡しとなる実践を、今後も続けていきます。