近年、日本各地で熊の目撃情報が相次ぎ、これまで熊とは縁のなかった地域でも「自分の生活圏に現れるのでは」という不安が広がっています。
ニュースで熊の映像を見るたびに胸がざわつく、外出のたびに警戒してしまう、子どもや家族が出かけると落ち着かない――。
そんな気持ちを抱える方が増えています。
野生動物の話題は、以前は遠くの地域の出来事のように感じられたかもしれません。
しかし、ここ数年は状況が変わり「もしかしたら自分にも関係があるかもしれない」という感覚が、多くの人の日常に入り込んできました。
この“日常の揺らぎ”は、生活を脅かす直接的な危険がある時だけではなく、「先が見えない状態が続く」 こと自体によって生まれます。
ニュースを目にするたび、落ち着かない気持ちが重なり、心の緊張が少しずつ蓄積していきます。
そこで、今回のブログでは、これまで体験していなかった熊出没という不安に対する対処法を考えてみました。
少しでもあなたの心が軽くなるきっかけになれば幸いです。
目次
1.災害と似た“予測できない不安”が心に与える影響
熊の出没に対して感じる不安は、地震や豪雨などの自然災害に対する感覚と非常によく似ています。
「いつ起こるか分からない」「どこで起こるか分からない」という“予測不能性”が心の緊張を強めるのです。
これは決して“臆病”や“弱い心”のせいではありません。
むしろ、人間が危険から身を守るために持っている自然な防衛反応です。
たとえば、
・どの地域に出るのか
・どの時間帯に現れやすいのか
・自分が通る道は大丈夫だろうか
といった情報がはっきりしないほど、人はより強い不安を感じます。
人間の脳は、情報が少ない状況では「最悪の可能性」を自動的に想像するという特徴があります。
これは脳の「身を守るための機能」であり、誰にでも起こる自然な反応なのです。
2.不安がふくらむ心理メカニズム
熊の出没ニュースに触れると、私たちの心の中で以下のような変化が起きやすくなります。
①“想像が現実より大きくなる”
情報が曖昧なほど、脳は空白を埋めるために想像を膨らませます。
・「もし私が外出したときに遭遇したら…」
・「子どもが一人で歩いていたらどうしよう」
といった“もしも”が次々に浮かびやすくなります。
②“心のアンテナが敏感になる”
不安が高まると、普段なら気にしない音や影に反応しやすくなります。
自然な身体反応なので、自分を責める必要はありません。
③“行動が少しずつ制限されていく”
・外出が億劫になる
・散歩や運動を控える
・夕方に出歩くことが不安
といった小さな行動変化が積み重なり、生活リズムが乱れやすくなります。
特に「家族を守りたい」という気持ちが強い方ほど、この影響は大きくなりがちです。
3.「不安を感じる自分」を責めないでほしい
不安に反応しやすい状態は、心が弱っているから起きるのではありません。
むしろ、あなたの心が“守ろうと働いている証拠” です。
災害が近づいている時と同じように、人は「自分と大切な人を守る準備」を無意識に始めるため、緊張が高まりやすくなります。
このような不安が長く続いたときに必要なのは、
自分を責めることではなく、不安と上手に付き合うための“心のスペース”を確保することです。
4.不安との付き合い方 ― 心を守るためにできること
不安を“なくす”ことはできませんが、
“不安に押しつぶされずに過ごす”ための工夫はできます。
① 情報を必要以上に追いかけすぎない
不安なとき、人は情報を集めて安心しようとします。
しかし、ニュースを何度も確認したり、SNSで推測情報を見続けるほど不安は強くなります。
「必要な情報だけを適度に受け取る」
これが心の安定にはとても効果的です。
② 日常に「小さなコントロール」を取り戻す
予測不能な不安が強いと、コントロール感を失いやすくなります。
そこで、日常で“自分で選べる行動”を増やすことが役立ちます。
例:
・外出ルートを調べた上で決める
・買い物の時間帯を工夫する
・できる範囲の安全対策を整える
・外出前に深呼吸をして身体を整える
自分の小さな選択を積み重ねると、心は徐々に落ち着きを取り戻します。
③ 誰かに不安を話す
不安は、話した瞬間に大きさが半分になるとも言われています。
・「自分だけではない」と感じられる
・話すことで気持ちが整理される
・“今できること”に目が向く
という効果があり、不安の悪循環を断ち切りやすくなります。
不安を誰かに伝えることは決して弱さではありません。
自分を守るための、勇気ある行動です。
④ 体の緊張をゆるめる
不安が高いと、無意識のうちに体も緊張します。
深呼吸、ストレッチ、短い休息など、身体をゆるめる習慣を取り入れるだけで、心の波も落ち着きやすくなります。
⑤ “不安な自分”を肯定する
「不安に感じて当然だよ」
「大切な人を守りたいんだね」
と、自分に優しく言葉をかけることは、心の回復を促します。
5.“オンライン”の相談先を利用する
もしこのブログを読んでいる方の近くに相談できる社会資源がなく、かつ出歩くことの怖さもある中なので、”オンライン”の相談先を利用することが重要です。
以下が、オンライン支援の特徴です。
・自宅から安心して参加できる
・移動の心配がない
・専門スタッフがサポートする
全国どこに住んでいても、オンラインなら安心して支援につながれます。
具体的な資源をいくつか紹介します。
①cotree
臨床心理士、精神保健福祉士など経験豊富なカウンセラーが200名以上所属し、自分に合ったカウンセラーを見つけるためのマッチングの質問があるのが特徴です。最初は熊への不安に対する単発の相談から始めるとして、もしカウンセラーとの相性が良ければ熊以外の悩みについて継続して相談するのもありです。
②うららか相談室
https://www.uraraka-soudan.com/
臨床心理士、精神保健福祉士など経験豊富なカウンセラーが750名以上所属するオンラインカウンセリングです。cotreeではカウンセラーとのマッチングを質問形式で無料で行っていますが、うららか相談室ではお試しコースとして3回のメッセージカウンセリングを有料で行っています。自分の悩みを送り、適したカウンセラーが返信をくれるので、その内容を見て自分に合うのかを確認できます。
気軽なメッセージカウンセリングからスタートし、その後必要と思えば電話やZoomを使ったカウンセリングに切り替え可能です。
③かもみーる
医師が監修するオンラインカウンセリングで、精神科医師のオンライン診察も受けることが可能です。出歩くのは怖いけど、「不安で食事が喉を通らない」「夜に寝られなくなってしまった」「動悸がおさまらない」「憂うつな気持ちが2週間以上続いている」などの症状に悩む方は、カウンセラーよりも医師に相談した方がいいかもしれません。なお、カウンセリングは自費ですが、医師の診察は保険が適応となります。
6.なぜ“つながり”が不安を軽くするのか
心理学では、不安状態にある人は「社会的つながり」があるだけで、心の安定度が大きく高まることが分かっています。
・話して気持ちが整理される
・自分と似た人の声を聞くだけで安心する
・孤立感が減る
・お互いに支え合える
こうした効果によって、日常の不安が軽くなり、心が回復しやすくなります。
熊の出没という不安も、災害の不安も、コントロールできない外的要因だからこそ、“つながり”が心の支えになる のです。
不安は「一人で抱えるもの」ではありません。
予測できない出来事が続くと、心の緊張は誰にでも起こります。
あなたが感じている不安は自然なものであり、決して異常ではありません。
もし「誰かと話したい」「落ち着ける場所がほしい」と感じたときには、ぜひオンライン支援を含めた社会資源をご活用ください。
7.終わりに
熊のニュースが続く今、日常が揺らいでしまうのは当然のことです。
不安を感じているあなたの心は、ただあなたや大切な人を守ろうとして働いているだけです。
不安そのものを消す必要はありません。
不安と付き合うための工夫や、誰かとのつながりを持つことで、心は少しずつ落ち着きを取り戻します。
あなたの不安が、必要以上に大きくならずに済むように――
そして、一人きりで抱えなくて良いと思えるように――
これからもビューズは、心の健康を守るお手伝いを続けていきます。
必要なときには、いつでも頼ってください。
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