目標を持って入った会社で現実との違いにぶつかり、「この先、何のために働くのだろう」と悩むことは、年齢を問わずあります。復職や再就職の先にある人生も、自分で選んでいきたい。そんな方へ、自分なりの答え「サードアンサー」を探すための一歩を考えます。
目次
頑張った先に、望んでいた仕事があると思っていた
入社したときには、目標があった。目の前の仕事を覚え、経験を積んでいけば、いつか自分がやりたかった仕事に近づける。そう思って、苦手なことにも取り組み、頼まれた仕事を引き受けてきた。
ところが、年月を重ねても、思い描いていた働き方には近づけない。むしろ責任ばかり増え、自分が何に向かって頑張っているのか分からなくなる。周りからは順調に見えても、自分の中では「このままでいいのだろうか」という問いが大きくなっていくことがあります。
努力しているのに、望んでいた景色が見えない。努力しているのに、なかなか報われない。このままずっと報われないんじゃないだろうか…と考えてしまいます。そんなとき誰かから「もう少し耐えればいい」と言われても、気力が追いつかないことがあります。
やりがいを感じられなくなった自分を、責めたり怠けていると決めつけてしまうと辛いものです。疲れているときには、楽しさや手応えを感じる余裕そのものがなくなることもあります。心身の回復を優先しながら、働くことについて考え直す時間が必要な場合もあります。
この記事は「夢を持って頑張りましょう」と背中を押すためのものではありません。かつての目標と今の現実の間で立ち止まっている方と一緒に、これからの選び方を考えるためのものです。
復職できても、「これからどうしたいか」は残る
休職しているとき、復職は大きな目標になります。決まった時間に起きる。外に出る。人と話す。仕事に戻るための準備を少しずつ重ねる。それぞれに大切な一歩です。
一方で、会社に勧められて復職支援の場に来た方が、「そもそも私は、なぜ元の職場に戻ろうとしているのだろう」と迷うこともあります。生活のためには働く必要がある。周囲の人を安心させたい。でも、その先にどんな毎日が待っているのか、日々がどう続いていくのか、まだ想像できないのです。
復職したあとも、休職前に感じていた問いが終わるとは限りません。仕事を続けながら通院し、ストレスへの反応に気を配っている方もいます。再び休職せず働けているけれど、「この先はどうしていけばいいか分からない」と話す方もいます。職場に戻れたことは確かな前進です。それと同時に、これからの人生に迷いが残っていることに気づくのは自然なことです。
「どうすれば復職できるか」と「どんな働き方なら、自分が納得して暮らせるか」は、つながっていても同じ問いではありません。復職の準備をしながら、後者も考えてよいのです。すぐに答えが出なくても、考え始めることには意味があります。
仕事には収入を得る役割があり、生活を支える大切な手段だから、まずはその事だけ考えたいという人もいます。何の為に働くのか、どんな働き方をするのかと考え決めていくことは、働いて生活を支え続けることを助けたり楽になる方法を見つけることでもあるのです。
では一体、何を目的にすれば良いのでしょうか。働く目的は人によっても、人生の時期によっても変わります。家族との暮らしを守りたい人もいれば、技術を身につけたい人、誰かの役に立ちたい人、仕事以外の時間を大事にしたい人もいます。私達は、どれか一つを「正しい働く理由」にしなくて大丈夫でなのです。
「諦めたくない。でも、何を選べばいいか分からない」
ビューズで出会うメンバーさんの中にも、そんな思いを抱えている方がいます。ある方は、頑張ってきた先にやりたい仕事があると考えていました。けれど、実際に経験した仕事は、期待していたものとは違ったそうです。
だからといって、このまま諦めて働き続ける人生にはしたくない。では、自分は何のために働いてきたのか。これから何をしたいのか。リワークに通うことは、自分にとってどんな意味があるのか。いくつもの問いの前で立ち止まっていました。
ここで大切なのは、すぐに「転職すればいい」「元の会社に戻ればいい」と答えを決めないことだと思います。目標にしてきたものと現実が食い違ったとき、人は仕事だけでなく、これまで積み重ねてきた時間の意味まで分からなくなることがあります。その迷いを飛ばして次の進路だけを決めても、気持ちが置き去りになるかもしれません。
「何がやりたいの?」と聞かれても、自信を失っているときには答えにくいものです。興味があることを口にして、「今さら無理だ」と言われるのが怖い場合もあります。ずっと人から求められる役割を優先してきた方なら、自分の希望を言葉にすること自体に慣れていないかもしれません。
まずは、迷っていることを迷っているまま話せる時間が必要です。「こんなことを言っていいのだろうか」と思う気持ちも含めて言葉にしてみる。そうした対話の中から、これまで大切にしてきたことや、実は辛いと感じていたこと、もう続けたくないことが少しずつ見えてくる場合があります。
「ミッドライフクライシス」が示す、人生を問い直す時間
「ミッドライフクライシス(中年の危機)」という言葉を見聞きする機会があります。仕事や家庭で担う役割が変わり、健康や将来の暮らしも気になり始める時期は「人生の折り返し地点」と呼ばれています。それまでの人生やキャリアを振り返って、「これでよかったのか」など疑問や不安を抱え、自身の人生に対する悩みや葛藤を感じる心理状態のことを指して呼ばれます。
野村総合研究所が2025年に実施した調査では、40代・50代の正社員2,060人に言葉の定義を伝えて尋ねたところ、53.0%が「直面している」または「直面しているかもしれない」と答えました。これは多くの方が働けなくなる、不安に苛まれるという意味ではありません。一見、普通に仕事を続けている人の中にも、表からは分かりにくい迷いや葛藤があるので、悩んだり不安が膨らんでいくのは決しておかしな事ではないと示しています。
肩書きや収入があり、周囲から成功しているように見える人でも、「ここまで来たけれど、この先はどうしたいのだろう」と悩むことがあります。人生を問い直すのは、何かに失敗した人だけではありません。加えて、この悩みは40代や50代特有のものでもありません。期待して入った仕事との違いに戸惑う若い方にも、復職を考えている方にも起こり得ます。
心身の不調を抱えているときには、考えるための余力が少なくなることもあります。だからこそ、「人生の答えを今すぐ見つけなければ」「不安だけど考えても仕方が無い、とにかくやらないと」と自分を追い詰めないでください。まず体調を整えながら、今の自分が何を負担に感じ、何を大切にしたいのかを少しずつ確かめていく。その順番でよいと思います。
なお、やりがいを見失ったことや、自分で選べなかったことが、うつ病の原因だと決めつけることはできません。病気にはさまざまな要因が関わります。職場環境や業務量など、自分だけでは変えられない条件もあります。自分を責めるためではなく、これからの選択肢を増やすために、働き方を見つめ直してみましょう。
「辞めるか、我慢するか」の外にあるサードアンサー
深く悩んでいるとき、選択肢が二つだけに見えることがあります。「今の仕事を続けて我慢する」か、「辞めてまったく新しい道へ進む」か。どちらにも負担や不安があると、動けなくなってしまいます。
そんなとき、もう少し広い視野から自分なりの答えを探す考え方が「サードアンサー」です。ビューズでは、自分の思い込みや周囲の意見だけで決めず、さまざまな人や価値観に出会い、考えの幅を広げる中で見つける答えとして、この言葉を使っています。
「三番目の答え」という名前ですが、正解が決まっている訳ではありません。あらかじめ用意された正解が一つあるわけでは無く、柔軟に視野を広げて考えてみた時に見えてくる自分の価値観に沿った答えのことです。
たとえば、今の職場で業務や働き方を相談する。勤務時間を調整しながら、仕事以外に大切な活動を持つ。すぐに職業を変えるのではなく、関心のある分野を学んでみる。復職を急がず、今は休養と生活を整えることを選ぶ。あるいは、仕事を離れることが自分に必要だと分かる場合もあります。
同じ「働き続ける」という選択でも、周囲に言われたから続けるのと、自分に必要な条件を確かめて選ぶのとでは、受け止め方が違うかもしれません。大切なのは、見た目に大きな変化があることではなく、自分の意思がそこにあるかどうかです。
もちろん、選択にはお金や健康、家族、職場の事情が関わります。希望を持てば何でもできる、と簡単に言うつもりはありません。制約を見つめたうえで、それでも自分に選べる部分はないか探す。その過程もサードアンサーの一部です。
自分の価値観は、小さな感覚から見つけていく
「自分の価値観を持とう」と言われると、揺るがない信念や大きな夢を見つけなければならないように感じるかもしれません。でも、今は自信がないという方が、すぐにはっきりした目標を言えなくても不思議ではありません。
そんなときは、これまでの経験を少し違う角度から振り返ってみるとよいかもしれません。
- 仕事や日常の中で、少しでも手応えを感じたのはどんなときだったか
- 誰かに頼られたとき、嬉しかった役割と、苦しかった役割は何か
- 「もう同じやり方では続けたくない」と感じたのは、どんな場面か
- 仕事以外の時間も含め、これから大切にしたいものは何か
「やりたい仕事」が分からなくても、「人と話す時間は好きだった」「一人で集中できる時間が必要だった」「休日まで仕事のことを考える暮らしはつらかった」なら、言葉にできるかもしれません。好きなことだけでなく、負担だったことや、自分に必要な休み方も、自分の価値観を知る手がかりです。
人の役に立つことが好きでも、誰にでもいつでも応えようとすると疲れてしまうかもしれません。その場合は「人の役に立ちたい」という思いと同じくらい、「無理のない範囲で関わりたい」という条件も大切にしてよいのです。
自信がついてから選ぶ、という順番だけではありません。小さく選んでみて、「これは心地よかった」「これは負担だった」と確かめることで、少しずつ自分の感覚を信じられるようになることもあります。最初から一生変わらない答えを決めなくて大丈夫です。
そして、自分で選ぶことは、すべてを自分一人で背負うことではありません。相談して情報を集めたり、助けを求めたりするのも、自分の意思による選択です。
仕事の外で「気になる」を試してみる
今の仕事をすぐに変えられなくても、関心のあることに触れる方法はあります。その一つが、無理のない範囲でのボランティアです。
「人と関わる仕事がしたかった」と感じるなら、地域の催しを見学してみる。「何かをつくるのが好きだった」と思い出したなら、短時間の活動を探してみる。関心のある分野の人に話を聞くだけでも、始まりになります。収入を得る仕事と同じ責任を、最初から引き受ける必要はありません。
ボランティアのよさは、立派な実績をつくることより、「やってみたいと思ったことは、自分にとってどうだったか」を確かめられる点にあります。思っていた以上に楽しいかもしれませんし、関心はあっても今の自分には負担が大きいと分かるかもしれません。どちらも、次の選択に役立つ発見です。
一方、ボランティアは誰にでも勧められる方法ではありません。休養が必要な時期に新しい役割を増やすと、かえって負担になることがあります。時間、移動、対人関係、活動内容を自分で選べるかを確かめ、難しそうなら参加しない選択も大切です。「誰かの役に立たなければ価値がない」と思って、自分を追い立てるために使わないでください。
また、仕事にやりがいをすべて求めなくてもよいと思います。生活を支える仕事を続けながら、創作や地域の活動、家族や友人との時間に別の充実感を見つける人もいます。仕事と人生が完全に重ならなくても、その人なりの納得の形はあります。
一人で答えを出さなくていい。話すことで見えるもの
「答えは自分の中にある」と聞くと、一人で自分を掘り下げ続けなければならないように感じるかもしれません。けれど、自分の気持ちは、人と話してみて初めて輪郭が見えることもあります。
「元の職場には戻りたい。でも、以前と同じ働き方は怖い」
「新しいことに興味はある。でも、生活費が心配」
相反する気持ちがあってもかまいません。誰かに話すうちに、「本当は仕事そのものより、働き方を変えたいのかもしれない」「今は決めるより、まず休みたいのかもしれない」と気づくことがあります。ほかの人の経験に触れて、自分にはなかった選択肢を知る場合もあります。
ビューズが対話やグループワークを大切にしているのも、決められた答えを渡すためではありません。一人で考えていると見えにくい自分の思いや、周囲に合わせているうちに置き去りにした希望に気づくためです。話し合いの中で違う意見に出会っても、それに従う必要はありません。「その考え方もある。でも、自分はどうだろう」と確かめる材料にできます。
相談相手は、支援者に限りません。主治医や家族、信頼できる友人、職場の相談先など、話す内容に応じて選べます。働き方や体調に関わることなら、一人で結論を急がず、必要な人と一緒に考えてください。自分で決めるために、誰かの力を借りてよいのです。
まとめ|今日、自分で選べることを一つだけ
人生の主役になるとは、いつも自信を持ち、大きな決断を下すことではないと思います。「どうしたいか分からない」と気づいたところから、自分の気持ちに少しずつ耳を傾けることも、その始まりです。
今日できることがあるとすれば、過去に手応えを感じた場面を一つ書く。気になる活動について調べる。迷っていることを誰かに話す。あるいは、疲れているから今日は休むと決める。それだけでも、自分で選んだ一歩です。
復職するか、転職するか、別の道を選ぶか。答えは一つではなく、今すぐ出さなくてもかまいません。ほかの人の経験に触れ、自分の希望と現実の条件を見つめながら、自分なりのサードアンサーを探していきましょう。これからの人生をどう歩むかを、少しずつ自分の言葉で選んでいけたらと思います。
参考資料
- 野村総合研究所「現役世代の中核である40代・50代就労者の約4割が『ミッドライフクライシス』による仕事のパフォーマンス低下を実感」(2025年10月16日)https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/files/000052690.pdf
- 米国国立精神衛生研究所(NIMH)「Depression」https://www.nimh.nih.gov/health/publications/depression
- 株式会社スタッフロール「スタッフロールのDNA」https://www.staffrole.co.jp/dna/
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